震災と瓦屋根(瓦屋根リフォームについて)

この度の地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

震災と瓦屋根
倒壊した建物の映像を見ますと、瓦屋根の住宅が多いように見受けられると思いますが、決して瓦屋根だから倒壊している訳ではなく、瓦屋根の住宅は築年数が古く、建築基準法などの法整備が整う以前の建物が多いからだと思います。

屋根が重いということは、回転が止まるとゴロンと倒れてしまう玩具の駒を想像していただければと思います。

屋根の軽量化は耐震対策として確かに有効ですが、瓦屋根のメリット・デメリットを理解した上で考える必要があると思います。

現在は瓦自体を軽量化及びロック式に形状を改良した『防災瓦』や、施工方法を改善した『ガイドライン工法』というのが確立されていますので、今は瓦屋根だからと言って、必ず耐震に問題がある訳ではありません。寧ろ、メリットの方が大きいと感じます。

瓦屋根のメリット・デメリット
メリット:従来の瓦(日本瓦)は日本の伝統的な屋根材で、耐久性や断熱性、遮音性、なんと言っても美観に優れた非常に良い屋根材です。
更に耐久性に至っては30年以上と言われており、スレートや金属屋根は塗装で表面を保護する必要があり、15年くらいに一度、塗装上塗りなどメンテナンスが必要なので、瓦屋根はメンテナンス・コストが安く済むと言うメリットがあります。
遮音性についても瓦は優秀で、金属屋根はどうしても雨音が室内まで聞こえるような場合があります。また、金属屋根は素材の性質上、熱伝導率が高いために遮熱しにくく、通気が悪いと結露しやすいという欠点もあります。

デメリット:従来の瓦屋根は非常に重量が重いので地震の際、揺れが大きくなり、住宅の基礎や柱・梁など構造部分に大きな負担を掛けます。
1981年(昭和56年)6月1日以前の建物であれば当時の建築基準法に沿った、屋根の重さを考慮した相当の基礎や構造になっているはずです。
逆に、強風・台風被害の多い地域には、瓦のような重い屋根の方が良いと言う考え方もありました。また、海岸沿いですと金属製屋根は錆び・スレート屋根は風化する問題もあるため、瓦屋根になってる事情もあります。
また、瓦は隙間があるので通気性は良いですが防水性が劣りますので、屋根の勾配(屋根の角度)をある程度、急にしなくてはいけなかったり、瓦の下の防水シート(ルーフィング)下地も重要になってきます。

ちなみに、瓦屋根の必要最低勾配は、4寸勾配(約121.3mm・4/10・約21.8゜)以上必要です。

屋根勾配

極論を申しますと、耐震だけを考えるなら、窓もない鉄筋コンクリート造の要塞、地下の核シェルターのような建物になるかと思いますが、それでは人間らしい豊かな気持ちで生活できませんよね。

そもそも、瓦の上がってない和式建築はどうなんでしょう? 刺身や蕎麦にソースを掛けて食べるようなもの。
「日本古来から愛されてきた瓦屋根の家だからこそ!」のメリットは、圧倒的にデメリットを上回る価値があると思います。

屋根素材別の重量比較

屋根の種類1㎡あたりの重量
防災瓦約35kg/㎡
日本瓦約45kg/㎡
金属製 ガルバリウム鋼板約5kg/㎡
セメント系 スレート屋根約20kg/㎡

瓦屋根は金属製屋根の9倍も重かったのですが、防災瓦は今までの瓦より10kg/㎡もの軽量化に成功しています。(それでも金属系の7倍ですが…。)

これからは木造住宅も構造計算をしていくようになると思われますが、構造計算では当然、屋根荷重も計算しますのでそれに見合った基礎、耐震壁量やバランス良い配置、柱・梁サイズや接合金物を設計すれば問題はありません。

防災瓦とは
耐久性や断熱性、遮音性、美観は、そのままに、軽量化(従来より10kg/㎡も軽量化)と、ずれないように下記のような引っ掛け部分や、クリップや釘・ビスで留める箇所を増やしたり、留め方を強固に改良されています。

防災瓦

ガイドライン工法とは
瓦自体の軽量化や留め方の改良された防災瓦を使用しても、実は地震で瓦屋根の破損が多いのは屋根の登頂部分の「棟瓦」↓

棟瓦

屋根の形状が山谷に折れた部分=隅瓦↓

隅軒

原因は施工方法にあり、従来の棟瓦は『葺き土』や『漆喰』などで積んだ瓦を『銅線』で結んだだけなので、銅線が切れたり、脆い葺き土や漆喰が割れて崩壊する事例が多かったのです。(土を水を混ぜて粘土化するので、湿式と言います。)

棟瓦 葺き土

今までの震災の経験を経て、瓦の施工方法が見直されました。業界で作った「ガイドライン工法」が強く推奨されています。

「ガイドライン工法」とは、下記のように棟瓦や隅瓦は従来の湿式でなく、乾式でしっかり下地に留める。

留め方もステンレス釘や、パッキン付きステンレスビス(ネジ)を使い、固定箇所数を増やす工法です。

ガイドライン工法

更に、国土交通省も令和4年1月1日より、建築基準法の告示基準(昭和46年建設省告示第109号)の改正が行われ、今後はすべての瓦屋根を緊結することとなりました。(こちらは、耐震と言うより強風対策が主旨のようですが…)

国土交通省 瓦緊結

瓦屋根リフォームの選択肢
①「従来型の瓦」を撤去して「防災瓦」に葺き替える。
 (例:瓦メーカー大手の株式会社 鶴弥)

三州瓦

②「従来型の瓦」を撤去して「金属製屋根」に葺き替える。その場合、金属瓦がオススメです。
(例:セキノ興産 金属瓦シリーズ)
パッと見は瓦に見えますが錆びにくいガルバリウム鋼板という金属製の屋根材です。焼き瓦に比べると重量は1/9と、とても軽いので耐震改修にも有効です。

金属製瓦

ちなみに、逆に、そっけない金属製屋根(瓦棒葺き)の上からカバー工法で、瓦デザインの金属瓦にリフォームすることもできます。

11_かわら455R

瓦屋根リフォームのポイント
瓦屋根リフォームのポイントは、既存瓦を撤去した後の下地です。
防水シート(ルーフィング)と、瓦桟木(さんぎ)などの木下地をしっかり施工しなくてはいけません。逆に雨漏りの原因になっては困ります。

ルーフィング

・カバー工法(金属・スレート屋根の場合)
瓦屋根は不可能ですが、金属製屋根やスレート屋根の場合は既存の屋根を解体せずに、その上からもう一枚屋根を掛けてしまう「カバー工法」と言うのがあります。

カバー工法


金属屋根の瓦棒葺きの場合は、断熱材を挟めることによって、遮熱・断熱改修にもなりますのでお忘れなく。

断熱材
金属屋根の瓦棒葺きの場合、図のように青い断熱材を挟めることができます。
屋根カバー工法 断熱材
断熱材の上から防水シート(ルーフィング)をして、新しい木下地を施します。

また、屋根リフォームの場合、通気についても考慮する必要があります。
通気を考えずに屋根内部の気密だけが良くなり、湿気が逃げずに蒸れてしまい下地が腐れては本末転倒です。

通気

まとめ
・瓦屋根のメリット:耐久性や断熱性、遮音性、美観性が良い。初期導入コストは高いが、メンテナンスコストが安い。

・瓦屋根のデメリット:重いので揺れが大きくなり、家の基礎や柱・梁などの構造に負担が掛かる、ズレる、落ちる、割れるリスクがあるが、近年は軽量化されてズレにくい『防災瓦』が主流になっている。

・瓦屋根の破損しやす箇所は、屋根頭頂部の「棟瓦」や、屋根の形状が山谷に折れた部分=「隅瓦」。

・「ガイドライン工法」とは、下記のように従来の湿式でなく、乾式でしっかり下地に留める。留め方もステンレス釘や、パッキン付きステンレスビス(ネジ)を使い、箇所数を増やす工法。

・後押しするように、令和4年1月1日より、建築基準法の告示基準(昭和46年建設省告示第109号)の改正が行われ、今後はすべての瓦屋根を緊結することになった。

・瓦屋根リフォームの選択肢は大きくふたつ。
①「従来型の瓦」を撤去して「防災瓦」に葺き替える。
②「従来型の瓦」を撤去して「金属製屋根」に葺き替える。その場合、金属瓦がオススメです。

・瓦屋根リフォームのポイントは、下地(防水シート・桟木下地)をしっかりすることが重要です。

・瓦屋根の場合は不可能ですが、金属・スレート屋根にする場合は、「カバー工法」があります。その場合、断熱・遮熱性能向上や通気についても考慮する必要があります。

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